一厘の秘密と仕組(大本教の神典)

『霊界物語』のメインテーマは神宝の争奪戦

そもそも『霊界物語』は神宝の争奪戦、言い換えれば、世界の覇権争いが主なテーマである。『霊界物語』の霊界とは死後の世界のことではなく「霊妙な世界」の略で、目に見える世界と目に見えない世界の、すべてを含めた大宇宙を指す。したがって『霊界物語』は大宇宙の物語なのだ。
それは「35万年前の太古の物語」という設定になっている。また『霊界物語』は、『大本神諭』の解説書という側面もある(『霊界物語』第12巻 序文参照)。
『霊界物語』のおおまかなあらすじは、救世主スサノウが八岐大蛇に象徴される悪を退治して、五六七神政の成就、松の世、すなわち永遠の「神の世」を建設し、主宰神の地位を追われていた国祖(国常立尊)を復権させる物語であることがわかる。
先述した「一輪の秘密」と「一輪の仕組」は、1巻の35章と36章のタイトルだが、この1巻は50章からなっている。前半は出口王仁三郎が高熊山で修行をした時の、幽界と神界の探訪記が記されており、後半は太古の地上神界での、神宝の争奪戦が記されている。
私が注目したのは、1巻の最後の「附記 霊界物語について」という章に記されたことである。それによると、「…本書もまた第1巻の或る一点を読めば全巻の精神が判るはずである。…」と記されている。
つまり、第1巻、特にその中の「ある一点」が非常に重要だというのである。後で明らかになるが、「一厘の秘密と仕組」の解明も、第1巻の「ある一点」が鍵を握っていた。

「契約の箱アーク」は突然その姿を隠した

ともあれ、「一厘の秘密と仕組」と「契約の箱アーク」には、何らかの関係があると思われる。そこで、「契約の箱アーク」について簡単に説明しておこう。
モーゼがシナイ山で十戒を授けられたことは先に述べたが、神は新たな命令をモーゼに下した。モーゼは神の指示どおりの材料、サイズ、デザインで箱を作成した。それが、「契約の箱アーク」と呼ばれるものである。
「契約の箱アーク」はアカシアの木で作られ、その長さ130cm、幅と高さがそれぞれ80cmである。下部の四隅には脚が付けられ、直接地面に触れないようにできている。持ち運びの際も、箱に手を触れないよう2本の棒が取り付けられ、全てが純金で覆われている。箱の上部には、金の打物造りによる智天使( ケルビム)が2体乗せられている。
モーゼの時代、「契約の箱アーク」の中には、「十戒石版」のほかにマナを納めた「マナの壺」と「アロンの杖」の、いわゆるイスラエルの「三種の神器」が納められていた。だが、ソロモン王の時代(在位 紀元前911~紀元前931)には、「十戒石版」以外には何も入っていなかったと伝えられている。
ソロモン王の死後、イスラエル王国は紀元前930頃に分裂する。
南のユダ王国はユダ族とベニヤミン族から構成されており、北のイスラエル王国はそれ以外の10支族からなっていた。
ところが、紀元前722年、北のイスラエル王国はアッシリア帝国によって滅ぼされてしまう。一方、ユダ王国はアッシリアに服属する形で存続していたが、紀元前609年にはエジプトの支配下に入り、紀元前586年エルサレム全体とエルサレム神殿が破壊され、支配者や貴族たちは首都バビロニアへ連行されることになる(バビロン捕囚)。
アッシリア帝国によって滅ぼされてしまった北イスラエルの10支族は、その後歴史から姿を消してしまう。これが世にいうイスラエルの「失われた10支族」だが、同じように「契約の箱アーク」も失われてしまうのである。
「契約の箱アーク」がいつ失われたかは明らかになっていないが、『聖書』には、ヨシア王(紀元前609年没)の時代に関する、『歴代誌下』35章3節の記述を最後に、直接言及されることはなくなった。(ウィキペディア百科事典参照)

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フランスのサント・マリー大聖堂のレリーフに彫られた「契約の箱」