自己実現できる社会

経済や政治のシステムだけでなく、「新しい時代」にふさわしい「コミュニティーモデル」をつくるには、なんといっても、人間性の向上と進化が重要な鍵を握るだろう。
教育においては、知識偏重、理性重視、人に勝つことばかりを教える教育から、感性重視、人との共存共栄を教える、心の教育に軸足を置く必要がある。
例えば、高学年になればなるほど、知識だけでなく愛の力が増すような教育だ。もしかしたら、次の時代は私たちの霊性心が目覚め、大きな心的成長を遂げるかもしれない。
ところで、心理学者マズローは、人間の欲求を基本的欲求(欠乏欲求)と成長欲求に大別した。基本的欲求とは、生命を維持するための「生理的欲求」や、危険から身を守るなどの「安全欲求」である。成長欲求とは、「愛情、集団所属の欲求」「自尊心、他者による尊敬欲求」「自己実現欲求」などである。
彼はこれらの欲求は階層的構図を持ち、「生理的欲求」や「安全欲求」が満たされることによって、段階的に「愛情、集団所属の欲求」「自尊心、他者による尊敬欲求」「自己実現欲求」へと進んでいくと考えた。
「自己実現欲求」とは、人格の完成を求める欲求である。
それは、よりいっそう自分自身であろうとし、自分自身がなりうるすべてのものになろうとする、自己充足の願望である。
人が幸せを感じるのは、欲求が満たされたときであり、最高の満足感は、自己の能力・特性を存分に発揮し、正しく評価され、多くの人々に役立っていると感じることによって得られるものだと思う。
そこで、「お金のいらないコミュニティー」を実現するためには、一定の水準以上の労働や、人に役立つ発明、発見、芸術、文化等の社会貢献に対しては評価制度を充実させて、正当な評価と名誉を与えることも大切になってくる。
しかし、そのような、自己実現に向かう社会を構築するには、まず、生命を維持するための「生理的欲求」や、危険から身を守る「安全欲求」などの、基本的欲求が満たされる社会をつくらなければいけない。