一厘の秘密と仕組(大本教の神典)

大本と『九鬼文書』と、秘密結社「ヤタガラス」の関係

『霊界物語』の著者の王仁三郎は、秘密結社「ヤタガラス」の暗号の仕掛けを知っていたのではないかと勘ぐりたくなるが、実際、王仁三郎と秘密結社「ヤタガラス」には、接触があった可能性も考えられるのである。
次は、このことを説明しよう。
大本の教祖・出口直は丹波の綾部の出身だが、徳川時代、綾部藩の藩主だったのは九鬼家である。九鬼家は紀州熊野の出身で、中世は九鬼水軍としてその名を馳せた。だが、徳川時代に綾部に転封されたのである。
出口家と九鬼家には接触があり、直は出口家没落にはじまる災厄のたびに、九鬼家の邸内で祀られていた本興稲荷に参拝していた。彼女は一家を襲う不運を、九鬼家の本興稲荷に払いのけてもらいたかったのだ。
ところで、この九鬼家に伝承されたのが、古史古伝の『九鬼文書』である。
先に紹介した『竹内文書』も古史古伝の一つだが、それによると、「古代の神宮」は神聖政治の「世界政府」だったという。この『九鬼文書』にも、古代の日本の王朝が世界を12の地域に分け、各地域に民王を派遣して世界を統治したと記されている。
古代史研究の大家、佐治芳彦氏(『謎の九鬼文書』徳間書店)によると、直は九鬼家の伝承(九鬼文書)に秘められた、神の啓示を受けたのではないかという。その証拠に、「九鬼大隈守との因縁がわかると、どえらいことになるぞよ、あいた口が塞がらんぞよ」と、直の「お筆先」に出た。
さらに、「ウシトラノコンジン」という神名が、『九鬼文書』に見られるのだ!

「そもそも宇志採羅根真大神と申し奉るは、すなわち造化三神、天神七代、地神五代、陰陽の神の総称にて、日月星辰・三千世界・山川草木・人類禽獣を始めとし、森羅万象の万物をして宇宙の真理より創造大成せらるる神の御事なり」

ここでいうように、「宇志採羅根真大神」とは、宇宙万物を創造する多くの神々の総称という位置づけである。九鬼神学では、世界の丑寅(北東)の方向にあたる国が日本で、日本こそが、世界の創造を担当する使命を持つとする。したがって「宇志採羅根真大神」は、世界創造の大使命を持つ日本の神々の総称になる。
この記述を見た時、この神名は暗号解読のヒントのために、暗号者によって創作され名づけられたものだと私は思った!?
詳しい説明は後でするが、「太陽の暗号」では、神の復活する場所が「ウシトラ=北東」に設定されているからである。それだけでなく、この『九鬼文書』には、暗号者の手が入ったと思われるからである。
そもそも、『九鬼文書』は、九鬼家の遠粗である天児屋根命の時代に記録された神代文字の文を、奈良時代に藤原不比等が漢字に書き改めたとされている。
問題は藤原不比等である。
前著『隠国日本版 神々の指紋』を参照して欲しいが、『記紀』は暗号者によって編纂されたもので、そこには「天岩戸開き神話」など、暗号解読のヒントになる物語が挿入されていた。
この記紀編纂の指揮をとったのが、藤原不比等だと考えられているのである。
彼は『記紀』だけでなく、暗号にも関与していたと私は見ている。
暗号者は秦氏と密接な関係だったが、藤原氏はこの秦氏の流れを汲んでいるのである。このことは、佐治芳彦氏をはじめ、多くの古代史研究が指摘しているところである。
他にも理由がある。
私はこの藤原という苗字は、秦氏が創作した暗号だと見ている。
藤原とは「不二原」で、それは「二つとない原」すなわち「約束の地」を指す。また、藤を分解すると、草冠は十と十、月、そして、「秦とよく似た文字」に分解できる。「十」はイスラエルの「失われた10支族」を示し、「月」は「外宮」の担当者を示し、「秦によく似た文字」は、秦氏と関係が深いことを示しているのである!?
それはともかく、出口家と九鬼家の不思議な因縁に驚かされる。
九鬼家に因縁のある神が、まるで、直と王仁三郎の器を借りて甦ったかのようだが、先述したように、この九鬼家(九鬼文書)に暗号者(秘密結社「ヤタガラス」)の影が見えるのだ。
もしかしたら、王仁三郎は九鬼家を通じて、暗号者(秘密結社「ヤタガラス」)と接触があったと考えられないだろうか!?
その接触の中で、王仁三郎は秘密結社「ヤタガラス」(秦氏=イスラエルの「失われた10支族」)から、暗号と「契約の箱アーク」のことを聞き、そのことを『霊界物語』の中に仕込んだとは考えられないだろうか!?
だとすれば、「八咫烏」というキーワードが『霊界物語』に刻まれたのは、「一厘の秘密と仕組」が、暗号者と関係することを暗示していることになる。
すでに見たように、「八咫烏」というキーワードが刻まれた章は、「一厘の秘密と仕組」を補足説明するような内容だった。それも偶然ではなく、そこには、今言ったような意図が秘められているのかもしれない。
いずれにせよ、出口家と九鬼家(九鬼家)にはつながりがあり、九鬼家と暗号者(秘密結社「ヤタガラス」)はつながる。

「艮の金神」は、暗号に示された「夏至の日の出」の場所(北東=丑寅)から甦る世の元の神である!?

出口家と九鬼家(九鬼文書)と暗号者の、3者のつながりについてお伝えしたが、次は「艮の金神」という神名と暗号との関係を説明しよう。
この神のことを、『大本神諭』は次のように言う。

「…艮の金神は此の世を始めた神なれど、余り我が強ふて丑寅へ三千年と五十年押込められて居りて、陰から構ふて居りたが、陰からの守護は夫れ丈けの事、神の威徳はチットも人民に判らんから、表に現はれて神の威勢の光を出して世界を救けるぞよ。大膜な事で在るぞよ。…」(明治33年旧4月7日)(『大本神諭 第一集』 編集者:大本神諭刊行委員会 発行者:出口孝樹 発行所:愛善世界社より)。

「艮の金神」はこの世をはじめた神だが、我が強かったので丑寅、すなわち北東へ3千年余り押し込められた(封印された)。だが、この度、世界を救けるために表に現れたのというのだ。
「世を始めた神で、北東へ封印されたが、世界を救うために甦った神…!?」
拙著『隠国日本版 神々の指紋』でお伝えした、「太陽の暗号」をご存知の方にはピンとくるはずだ。先述したように、この暗号で「約束の人」(最高神)が甦るのは「夏至の日の出」の場所、すなわち丑寅(北東)だった!
それを示す暗号を紹介しよう。