四書五経『四書五経一日一言』(「論語」を省く)
四書五経とは、儒教の経書の中で特に重要とされる四書(「論語」「大学」「中庸」「孟子」)と五経(「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」)の総称。
- まことに日に新たに、日日に新たに、また日に新たなり(大学)
- 博く之を学び、審らかに之を問い、慎んで之を思い、明らかに之を弁じ、篤 く之を行う(中庸)
学ぶのは広く、精密にそれを調べ、慎重に考え、明快に結論を出し、それを篤く行う。博学、見聞、深思、明弁、篤行と並べられる儒教の徳目を示している。 - そく隠の心は仁の端なり。羞悪の心は義の端なり。辞譲の心は礼の端なり。是非の心は智の端なり。(四端の説)(孟子)
かわいそうだなという気持ちは仁の始まりである。善悪がわかるのは義の始まりである。譲るという気持ちは礼の始まりである。是か非かわかるのは智の始まりである。つまり、やっていいことか悪いことかがわかるのは智の始まりである。 - 天の時は地の利に如かず。地の利は人の和に如かず(孟子)
一番重要なのは人の和であって、その次が地の利であり、その次が天の時である。 - 人を使うに道を以ってせざれば、妻子にも行われること能わず。(孟子)
人を使うときには、ちゃんとした道理を示さなければ自分の家族でも言うことを聞かない。 - 人の患いは、好んで人の師と為るに在り。(孟子)
人の困ったことは、とにかく先生になりたがることだ。 - 声聞情に過ぐるは、君子之れを恥ず。(孟子)
自分の実力よりも評判が高くなることを、立派な人は恥ずかしいと思っている。虚名に溺れないように気をつけなさい、という教えである。 - 知者はこれに過ぎ、愚者は及ばず。(中庸)
頭のいい人はやりすぎ、愚かな者は及ばない。中庸を求めることの重要さを示している。 - 至誠は神の如し。(中庸)
至誠は神のような力を持つ、と言っている。この場合の神は、「神様のように力が出る」という意味。 - 師を択ぶは慎まざるべからず。(礼記)
師を選ぶときは慎重であるべきだ、ということ。裏返して言えば、変な先生につくと大変な目に遭ってしまう、という意味である。マルクス主義隆盛の一時期、マルクス主義の先生について一生を棒に振った人が日本にどれだけいたことか。 - 人一たびして之れを能くすれば、己れ之れを百たびす。人十たびして之れを能くすれば、己れ之れを千たびす。
人が一回でできることを自分は百回する。人が十回でできることを自分は千回する。これは、すべてのことをに熟達する王道である。 - 心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食らえどもその味を知らず。(大学)
ぼーっとしていたり気落ちしているときには、何かを見ていても見えないし、聞いても聞こえないし、食べても味がわからない。 - 恒産なければ、因って恒心なし。(孟子)
ちゃんとした財産がなければ、落ち着いた気持ちはない。 - 尊客の前には、狗をも叱せず。(礼記)
立派な客の前では犬でも怒らない。 - 兄弟かきにせめげども、外其の務りを禦ぐ。
兄弟は垣根の中では喧嘩をするかもしれないけれども、外からの侮辱には力を合わせて皆で守る。 - 時なるかな、失うべからず。(書経)
よい時期が来た、逃してはいけない。チャンスを逃すなという意味。 - 王の言は糸の如くなるも、其の出ずるや綸の如し。(礼記)
王様の言葉は糸のように細くても、口に出してしまえば紐のように太いものになる - 物に本末あり、事に終始あり。先後する所を知れば、則ち道に近し。(大学)
物事には始まりと終わりがある。だから、その順序を知ることがしかるべき
道に近づくことである。 - 浩然の気を養う。(孟子)
浩然の気とは、日常の雑事から離れたおおらかな気分。(瞑想が最も効果的) - 作る者、之れを聖と謂い、述ぶる者、之れを明と謂う。(礼記)
これは堯舜と孔子の関係を述べた言葉である。堯舜は作る者であって「聖」である、孔子は「述べて作らず」だから「明」である。 - 志士は溝がくに在るを忘れず。勇士は其の元を喪うを忘れず。(孟子)
志士と呼ばれる人は、溝の中に死体が転がるかもしれないことを忘れてはいけない。勇士は、自分の首がいつはねられるかわからないことを覚悟すべきである。 - その家に教うべからずして能く人を教うる者は、これ無し。(大学)
自分の家で自分の子供をきちんと教えられないのに、人を教育できる者はいない。 - 事は予めすれば則ち立ち、予めせざれば則ち廃す。(中庸)
あらかじめ準備をすれば成功するし、準備をしなければ、必ずだめになる。 - 鬼神は常に享くるなし、克く誠なるに享く。(書経)
神はいつでも言う事を聞いてくれるものではないが、誠なるものの祈りは聞いてくれる。 - 其の小を養う者は小人為り。其の大を養う者は大人為り。(孟子)
小さなことに一所懸命になっているのは、小人である。大きなことに一所懸
命になっているのは大物である。 - 之れを叩くに小なる者を以ってするときは則ち小さく鳴り、之れを叩くに大なる者を以ってするときは則ち大きく鳴る。(礼記・学記)
小さなもので叩くと小さく鳴り、大きなもので叩くと大きく鳴る。
西郷隆盛を評するのに使われた言葉で、西郷は、大きく叩けば大きく応えてくれる人物であったというのである。 - 富は屋を潤し、徳は身を潤す。(大学)
お金があれば家が立派になる。徳があれば人が立派になる。 - 大徳は必ずその位を得、必ずその碌を得、必ずその名を得、必ずその寿を得。
立派な徳を身につければ、必ず位も禄も名前もついてくるし、長生きする。 - >仁者には敵なし。(孟子)
仁とは、慈しみの心のことで、慈しみの心を持つ人に対しては、天下に敵はいない。 - 礼は君の大柄なり。(礼記)
礼儀は君主にとって最も大切なことである。 - 小人閑居して不善を為す。至らざる所なし。(大学)
つまらない人は暇になると悪事を働きかねない。 - 徳慧術知ある者は恒にちん疾に存す。(孟子)
徳があるな、知恵があるなという人を見てごらんなさい。必ず人に言えないような苦しみや病気を体験した人ですよ。 - 四十にして心を動かさず。(孟子)
四十歳になったら、もう志を立てず心を動かさない。論語の「四十にして惑わず」と同じ意味。 - 仁を好めば、天下に敵なし。(孟子)
道徳的にうまくやっていけば天下に敵はない。